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スリランカ動向ニュース


提供:ビコーズインスチチュート株式会社

2009-11-06

・ 【スリランカ動向ニュース】 ビコーズ インスチチュート 2009 11/6

 

最近のスリランカの動向について報告する。

3回に分けた報告の最終回。 

 

    ■■ パート3 ■■

 

【北部避難民】

■国内避難民の解放と帰還を渋っていたスリランカ政府が一転して、「数」のアリバイづくりを始めている。現地UNHCRも10月末までに9万人が帰還し、先週も毎日2千5百人から4千人のペースで避難民が「移送」されているとしている。

11月5日、ボゴラガマ外相は各国外交関係者を前に「11月3日までに約11万人の帰還を実施した」と最新の数字を報告。地雷除去も7割終了し、「公約」どおり来年1月までに避難民の帰還を完了することは可能と述べた。4日には大統領自身が北部ムラティブ県西北部「トゥヌカイ」郡を訪問し、帰還民達を激励したという。

UNHCRなどの資料で、<9月上旬>と<10月29日現在>のワウニアのキャンプ収容者数を比較すると、5万7千人減少しており、帰還が進められていることは事実であろう。

「北の新たな出発(Northern Spring)」とも名付けられたスリランカ政府の北部復興開発は、2エーカーの土地配分を含む農業再開や小規模産業従事者のための職業訓練など手厚い支援策が盛り込まれている。

しかし各地に散らばった大半の帰還者は、当初学校や宗教施設にとどまらざるを得ず、帰還先の住居や日々の食糧提供に加え、保健医療、教育サービスがいつ、どのように提供されるのか「質」の問題が残る。前出のUNHCR担当者は、いまだに国連機関を始め援助機関の動きに対する制限があることも問題として指摘している。

 

■なにが帰還促進の背景にあるのか。そもそも避難民の「隔離」に意味がなくなってきたこともあるが、最近の欧米諸国の動きが政府の焦りに繋がっている。

10月後半、米国務省は北部紛争地域での政府軍の戦争犯罪を匂わせる情報収集結果を報告書にまとめて議会歳出委員会に提出。続いてEU議会では「国内避難民キャンプや人権問題」に対する非難決議案が採択された。11月4日には米下院で避難民の早期帰還や国際機関のアクセスを促す決議案がほぼ全会一致で採択されるなどした。

また、政府軍兵士によるとみられるタミル人殺害現場のビデオの真偽を検証する作業も国連関係者によって進められている。米国をプライベートで訪問したフォンセカ元軍司令官を米国当局が事情聴取する動きも見せ、政府は神経を逆撫でされた。

しかし、スリランカ政府が最も懸念しているのは、EUの関税譲許特恵「GSPプラス」の延長の可否である。すでに最後通告に近い報告書を突きつけられているものの、現状改善で最悪の事態は回避できると考えている。EUの報告書に対する異議申し立て期限は11月6日。その前日に行われた冒頭のボゴラガマ外相の「演説」は異議申し立て書類の「抜粋」だろう。

<参考資料>

「U.S. Department of State「Report to Congress on Incidents During the Recent Conflict in Sri Lanka」

http://www.state.gov/documents/organization/131025.pdf

 

【民族和解への道】

紛争終結以来、スリランカの問題は避難民の帰還という「表層」の動きに注目が集まってきた。しかし、より深刻な問題は民族和解という根本的問題解決に向けた政府の意志と計画の不透明さである。

スリランカ政府はこれまで内外に「全党派代表者会議(APRC)によって民族和解への道筋を示す」という説明を繰り返してきた。

だが実際には憲法改正の検討も視野に入れたAPRCは政治のツールどころかアクセサリーに成り下がり、「一歩前進二歩後退」と揶揄されている。

同時に、最終的な結論を出し急ぐことの危険性もある。現在のタミル人政治家は与党に与(くみ)しているか、LTTEの影響下にあったタミル政党であり、タミル人の声を代弁するには適格性が不十分だ。タミル人の声が議論に加わるためには、正当性を持つ代表者が選出されるまでの時間が必要だ。

選挙権、被選挙権、メディアの自由が保証された中での選挙が実施されるかどうか、戦時に名を借りた独裁体制から民主化に移行するプロセスが保証されることが民族和解のための基盤として必要である。

 

【日本の貢献に対する期待】

■10月28日午後、22名の英国議員が中世風建築のウェストミンスター・ ホールに集まり3時間にわたってディベートを繰り広げた。テーマはスリランカの現状。

議論の中では大多数の議員が「スリランカに対するEUのGSPプラス対象からの除外措置、コモンウェルスからの除外の検討」という提案に賛意を示した。タミル人の有権者もいる英国という事情もあるが、驚かされるのは議員らの正確な現状把握とそれをささえる情報量である。避難民キャンプの状況、地雷除去を理由にしている避難民帰還計画遅延、スリランカ政府高官の言動、中国の対スリランカ支援の状況と影響に対する議論をさまざまな角度から切り込んでみせた。

http://www.theyworkforyou.com/whall/?id=2009-10-28a.101.1&s=speaker%3A10133

 

■一方、日本の関わり。

「武力による紛争の解決は選択肢ではない」「スリランカ政府は政治的解決にコミットしており軍事的解決は政治的解決を代替するものではない」。

前者は2006年の遠山外務大臣政務官のスリランカ訪問時の外相(サマラウィーラ現野党議員)の発言。後者は2007年のラージャパクシャ大統領訪日の際の福田首相との会談での発言である。

日本の対スリランカ外交は現実が「なし崩し」的に悪化する中で、現状追随で推移してきた。どこかで回復することを期待しながら現実は大きく期待値を逸れた。しかし今までの態度を変えることが出来ない迷い。そして政権が変わった今も、今後のスリランカ支援に対する選択肢さえ示せずにいる。

北部復興開発に大口の支援を求められている日本政府だが、それに対して「避難民キャンプにいる子どもの数を公表せよ」などとスリランカ政府に具体的に迫った形跡すらない。

10月1日、就任後間もない岡田外相を異色の顔合せのグループが訪れた。アーミテージ元国務副長官、ウティーム元モーリシャス大統領ら7名からなる「スリランカ和平に関する国際有識者会議」である。この「非公式グループ」の全体活動は明らかではないが、アーミテージ氏はスリランカ政府が反欧米感情をつのらせていることも背景に、「日本政府にはスリランカ政府と国際社会の架け橋になってほしい」と要望したという。

その後、会合をアレンジした藤田幸久参議院議員ら民主党議員の他、自民党からも逢沢一郎(元外務副大臣)、塩崎恭久(元官房長官)、小池百合子(元防衛大臣)氏らが出席して懇親会が持たれ、その場は盛り上がったかに見えた。

2週間後の10月13日。池口修次(民主)、世耕弘成(自民)氏ら議院運営委員会筆頭理事による超党派議員団がスリランカを訪問し、ボゴラガマ外相と会談した。

翌日の報道では「民主新政権もスリランカ政府の方針を支持」と報じられたが、実は今回の訪問はマレーシア、スリランカ、インドの3カ国を訪問する議会交流の一コマで、一行はなんら特別なメッセージを携えていたわけではなかった。

「優柔不断」「ちぐはぐ感」……。日本政府のニュートラルな影響力に期待する関係者は、スリランカ政府に「利用」されている日本の姿に苛立ちを強めているかもしれない。

「お人好し」外交からの脱却。正確な情報収集、政府中枢の分析に基づく合理的な判断がなされる時代は来るのか。まずは新政権には、これまでの対スリランカ支援が同国の民族融和やガバナンスにどのような影響を与えたのかを総括した上で、今後の支援の方向性を考えることが求められている。

紛争が終結した今、スリランカ政府や支援国に求められているのは過去の流れや現在の政治状況から未来を描くことではなく、将来の「あるべき姿」から出発してやるべき事を考える「バックキャスティング」であろう。

 

【輝ける一日】

スリランカは懸念材料ばかり……とも見えるが、明るい話題もある。

観光が復調の兆しを見せているのはその一つ。まだ宿泊施設が十分に整ってない東部でも外国人観光客が多く見られるようになった。7つの世界遺産を誇る同国にとって、治安の安定と多様な観光資源の発掘は投資対象としても売り込み材料であるはずだ。

紛争リスクという足枷が外れ、同国の持つポテンシャルが発揮できる時代が訪れている。紛争の終結自体は北部の避難民にとっても、スリランカ全体の人びとにとっても明るいニュースであることに変わりはない。市民にとって毎日が輝ける一日になるこの機会を、スリランカ政府はどのように生かそうとしているのか。

欧米諸国からの圧力に対し「国家主権を犯すな」という主張を繰り返す政府。しかし問題にされているのは構成員である全ての市民の幸福という社会契約に対する責任のあり方だ。

先日最高裁長官を退官したサラット・シルバ氏は「現状の政府の(タミル人に対する)対応は新たな紛争の下地作りに他ならない」と指摘した。

もしも紛争の終結が単なる独裁体制の強化のためのものであったならば、「輝ける一日」のために犠牲になった多くのスリランカ人の貢献は無駄に終わることになる。

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